押入れの整理をしてたら白土三平の「梔𨊂嘿潢(イシミツ)」が出てきたので読んだら面白かった。

イシミツという謎の不老不死の薬をめぐる6話ほどの短編オムニバス。

以前から思ってたけど、手塚治虫火の鳥・黎明編で、少年ナギが血を飲むと不老不死になるという火の鳥を命を懸けて守ったにもかかわらず、

その鳥はすでに不老不死の能力は無かったという、悲惨なシーンがあったと思うが、

これはイシミツのパクリというか、手塚がライバル視していた白土のオマージュのようなものだと思う。

イシミツでは少年は母を病気を治すためにイシミツを探すが、イシミツが冬虫夏草のことであると吹き込まれ、探し当てたものの吹雪で力尽き死んでしまい、自分が大きな冬虫夏草に寄生された状態で発見されるという、白土らしい凄惨な話。

漫画はハッピーエンドであるべきであり、悲惨な話は描くべきではないという方針だった手塚治虫に大きな影響を与えたに違いない。

書かれた時代が気になってたんだけど、白土のイシミツが1963年、手塚の黎明編が1967年でやはり白土のほうが先だった。

ただ黎明編には1954年に描かれたバージョンがあるそうで、それは読んでないのでわからない。

イシミツには初期の白土作品のスターシステムの常連である老忍者のオドが出てくるのもうれしいところ。

オドは他の作品で両手首を切り落とされるエピソードがあるが、100年以上もたってるにもかかわらず、この作品でもやはり手首が無いまま出てくる。

それが火の鳥鳳凰編の我王が何百年も後である乱世編にも腕が無いまま出てくるのに似ているというとこじつけだろうか。

 

そういえば火の鳥鳳凰編で良弁僧正が即身仏になるが、これも白土三平の忍者武芸帖の最終回で無風道人が即身仏になる影響だと思う。

もっとも、手塚治虫の場合、パクリとかオマージュとかではなく、おもいっきり対抗心でやってるんだと思うけどw