寺沢武一は唯一無二の天才漫画家だと思っていて、「コブラ」はたびたび読み直しているが、
コブラの一巻を読み直してみるとその天才ぶりに驚愕してしまう。
コブラは元は、宇宙海賊のような波乱万丈の生活に憧れているだけの、しがないサラリーマンだったが
ふとしたきっかけで記憶を取り戻し、実は記憶を消してサラリーマンに身をやつしていた、
本当に宇宙海賊のコブラだったという、これだけを最初の1話で書いてしまう。
複雑だがわかりやすい、今後の展開をワクワクさせる設定だ。
これ以上素晴らしい始まり方をする漫画があるだろうか。
すべての少年漫画のお手本にしてほしいくらい。
今後波乱万丈の冒険が始まるという始まり方は、少年向け冒険物の原点ともいえる「宝島」にも似ている。
おそらく作者は、少年がワクワクするのはどういうものなのかよく研究してわかっていたのだろう。
また、寺沢作品特有のアメリカドラマのようなジョークを混ぜたウイットに富んだセリフ回しはいまだ誰にもまねされていないと思う。
しかも年代を調べてみるとこのコブラの1話が描かれたのは作者がなんと23歳の時である。
寺沢武一手塚治虫のアシスタントだったそうだが、手塚治虫に匹敵する天才だったのかもしれない
そう見るとコブラの初期には手塚治虫の影響と思われる表現が多い。

コブラの顔も手塚キャラに見えなくもない。