私は本を全くと言っていいほど読まないんだけど、
気分転換とか空いた時間にちょっと読書なんてできるといいと思ってて
かといって読みたい本があるわけでもなし、村上豊の絵が好きで買って持っていた
佐藤さとるの「天狗童子」というのを読んでみた。

天狗童子―本朝奇談(にほんふしぎばなし)

天狗童子―本朝奇談(にほんふしぎばなし)

子供向けならすぐ読めるだろうと思っていたが、読書なんておそらく10年以上もしていないので
集中力が続かず、1度に2,3ページづつしか読めない。
そもそも読書をしなくなったのは、読書をするような心の余裕がないからであって
読んでもいつの間にか字を目で追ってるだけで全然頭に入らず、メールやPCの画面が気になったりする。
それでもがんばって何か月もかけてかけてやっと読み終わった。


佐藤さとるという作家の名前は知ってたけど、この作品は何というか初めての体験だった。
主人公は九郎丸という天狗の修行をしてるカラス天狗で、元は人間の名家の子。
タイトルや表紙絵からして、天狗の子が妖怪と戦ったりでもする漫画風の話かと思ってましたが
なんとこの子がいろんな人と出会いながら武将である父親に会いに行くというだけの話。
与平という山番をしてる笛の上手なお爺さん、大天狗、お稲荷様、坊さん、
妹分のカラス天狗の茶阿弥、忍者、武将などが出てくる
それらの登場人物の人柄の良さや九郎丸への気遣いが、会話の内容や言葉遣いで丁寧に丁寧に表現されている
大天狗や武将のセリフは威厳に満ちて寛大で、お稲荷様や坊さんは知的でひたすら優しい
九郎丸や茶阿弥は生意気で健気でかわいらしい。与平はいつも九郎丸に付き添い優しく見守っている。
個人的に村上豊の絵が好きなので九郎丸や茶阿弥の顔のかわいらしさもいい。
それにしても女の子だから茶阿弥とかいて「ちゃあみ(チャーミー)」ってすごいアイデア
大きな出来事は何も起きない。ピンチも大冒険もない。意地悪な人は出てこない。
最終目的の父親に会うシーンもさらりと書かれている。
これは佐藤さとるが創造したキャラクターを魅せるための物語なのだろう。
また、登場人物だけではなく天狗の世界や天狗が持つ不思議な能力についても細かく説明されている。
そんなジャンルの本が世の中にあるとは。驚いてしまった。