スーパーでセロテープのカッターを買って帰って開けてみたら
噛んだガムか何かをいたずらで擦り付けてあったので返品しに行った。
「どうもすみませんでした。どこかの子供ですかねえ」
「子供?いやこういうのは大人でしょう」
なぜか知らないが私はそれまで子供の仕業だとは全く思ってもいなくて、
なんの根拠もなく寂しいお年寄りとか、ひねくれた大人の仕業だろうと思い込んでいたので子供と言われたのが意外だった。
子供ならもっと見つからないようにやるのではないだろうか。
そんなこと考えながら帰ろうと駐輪場に行ったら、私のバイクの隣でじいさんがそのスーパーで買ったらしいおにぎりを食べている。
「やれやれ、家で食えばいいのに。狭い駐輪場で私をよけようともしないし、食べ方も汚らしいしかんじのわるいジジイだなあ」
とか思ってたら、おにぎりのビニールをポイと道端に捨てたのでムカッと来た。
私は地面に落ちてるビニールを指さして
「おい、ゴミ拾っとけ」
テープカッターの件で私の想像上の犯人である「他人に迷惑をかけて喜んでいる寂しいお年寄り」のイメージと重なってとげのある言い方になった。
「モグモグ、モグモグ、ああ、食べてから拾う…。」
「なわけあるか。風で飛んで行くだろうが。拾ってから食べろ。」
「モグモグ。食べたら捨てるっていってるだろうが」
「じゃあ食べ終わるの待ってるから早く食べろ」
こうなったら私も意地だから腕を組んで爺さんの顔を見下ろしながら食べ終わるのを待つ。
爺さんもなかなか肝が据わってるようで私ににらまれたままでも平静を装ってモグモグおにぎりを食べている。
まあ、さぞやまずいおにぎりだったろう。
「モグモグ…ふうーっ、さあて、帰るとするか」
食べ終わったらこういうこと言うんだろうと私が思ってたとおりのセリフをわざとらしくつぶやいて
少し風で飛ばされたビニールを拾って、こんどは馬鹿丁寧に小さいビニールまで全部拾って、
私の足元にあった私が気づかないような小さなゴミまで私をどかせて拾って帰って行った。やれやれ。
ほらやっぱりこういうのって大人でしょ。