ゴルゴ13の「饒舌なコイン」と言う話で
周りのビルに遮られて死角になって見えないはずのビルの一室内の壁に貼られたコインを、
時速200kmで飛ぶヘリから、慣性の法則を利用してゴルゴが狙撃すると言う話がある。
「走ってる車からボールを落とす」図で、その理屈が説明されてて、最初読んだときは
「なるほど、よくこんなトリック考えるなあ」とか感心したんですが、
改めてよく考えてみるとちょっとおかしい。
確かに高速で移動しながら撃てば、弾丸の軌跡は、スコープで狙ったものよりずれるでしょうが
それは移動してるものから見れば「ずれて見える」のであって
ヘリの速度がどうだろうが慣性の法則がどうだろうが、銃弾は直線でしか飛ばないはずなので
ほんとうに死角になってるのであれば、銃弾も入り込めないはず。
作画スタッフはそのことに気づいていたのか、セリフでは「死角になっている」とか
「外からは見えない」とか言ってるのに、図では死角になっていない。
それでもヘリの速度を計算して狙撃を成功させた事には違いないので、ゴルゴはすごいんですが
それは単に高速に移動してる乗り物から小さな標的を狙うと言う、いつもゴルゴがやってることであり、
それなら時速200kmを保ちながら飛ぶようヘリの操縦士に指示したのも、
慣性の法則を利用した」との、珍しいゴルゴ自身の説明も
「走ってる車からボールを落とす図」の例も、あまり意味がない。
ヘリなんだから低速か静止してたほうが楽だったはず。(ミサイルに狙撃される恐れもあったが)
これだとゴルゴが自ら、無意味に狙撃しにくい状況を作っただけの妙なことになってると思う。
他のエピソードであるような、重力とか風とか、陽炎による屈折を利用して命中させるほうがよほどすごい。
たぶん本当は、「走ってる車からボールを落としたら、車に乗ってる人からは垂直に落ちてるように見え、
止まってる人から見ると、斜めに落ちてるように見える」
と言うのを利用したトリックを書きたかったんじゃないだろうかとおもうけど。
コリオリの力」とかもそうですが、実際に曲がってるわけじゃないですからね。
いや、その状況を「曲がってない」とも言い切れなくて
コリオリの力」がイメージしにくいのもそのせいなんですが、そのへん作者も混乱したのかもしれない。
そういうのを利用した狙撃のエピソードも、ぜひまた書いて欲しいですね。